「ラブホテル」としての厳密な規定がないなかで、風営法におけるラブホテルの位置づけを理解することはとても重要です。ここでは、ラブホテルが該当するとされる風俗営業や注意すべきポイントについて説明していきます

 

風営法や地域条例にしたがうことが大事

風営法においてラブホテルはどのように位置づけられているのでしょうか。実は、風営法には特にラブホテルを指す言葉はなく、また特定の条件なども記載されていません。つまり、ラブホテルの定義については一般人からすると不明瞭な面があるということになります

 

したがって、重要視するべきは、ホテルとしての営業形態がどのようなものか、という点になってくるでしょう。事実、風営法におけるラブホテルは、風営法第2条第6項4号によれば「店舗型性風俗特殊営業とされており、また店舗型性風俗特殊営業については以下のように定義しています。

 

「専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む。以下この条において同じ。)の用に供する政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る。)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業」

 

店舗型性風俗特殊営業であるならば、その営業について店舗所在エリアの公安委員会に届出を行わなければいけません。

 

北海道におけるラブホテルの新規開業規制

風営法2条6項4号ではラブホテルを店舗型性風俗特殊営業としており、道条例第10条2項1号では、北海道内全域において店舗型の性風俗特殊営業を禁止しています。またラブホテルを含む4号営業について、条例で以下のように制限していることから、新規開業は難しいと考えた方がいいでしょう

 

「店舗型性風俗特殊営業の禁止地域等」

法第2条第6項第4号の営業のうち、個室に自動車の車庫が個々に接続する施設であって次のいずれかに該当する構造設備を設けて営むものについては 別表第3に掲げる地域以外の地域(札幌市中央区の南4条(南4条通り以南の地域に限る。)、南5条及び南6条のそれぞれ西2丁目から西5丁目までの地域以外での営業禁止)

ア 個室に接続する車庫(2以上の側壁(カーテン、ついたて等を含む。)及び屋根を有する
ものに限る。以下同じ。)の出入口が扉等によって遮へいできるもの
イ 車庫の内部から個室に通ずる専用の人の出入口又は階段若しくは昇降機が設けられてい
るもの
ウ 個室と車庫とが専用の通路によって接続しているものにあっては、当該通路の内部が外
部から見えないもの
⑷ 法第2条第6項第4号の営業のうち、前号に規定する営業以外のもの 都市計画法第2章の規定により定められた商業地域以外の地域

法第2条第6項第4号の営業のうち、前号に規定する営業以外のものについては「都市計画法第2章の規定により定められた商業地域以外の地域での営業禁止

※風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例より「店舗型性風俗特殊営業の禁止地域等」から抜粋

 

非常に限られた区域での営業しか認められていないため、同地域における新規出店は現実的に厳しい状況にあると考えられます。

 

小樽市の条例について

たとえば小樽市の場合、平成21年にラブホテル建築規制条例が施行され、以下の条件を満たさないものはラブホテルであるとみなされるようになりました。

 

  ① 玄関は、視界を遮るような塀などがなく、外部から内部を見通すことができ、かつ、営業時間中に自由に出入りすることができること。

② 客と従業員とが開放的に対面することができるフロント等を設けること。

③ 客室に設置する自動精算機又は料金精算のためのエアシューターなど、直接従業員を介さずに料金精算ができる設備を有しないこと。

④ 利用可能な空き室の一覧パネル等の操作により、客が任意に客室の解錠を行うことができる構造でないこと。

⑤ 客が自由に利用することができるロビー等を設け、その床面積は所定の面積*1を確保すること。

⑥ 客が自由に利用することができる食堂等を設け、その床面積は所定の面積*1を確保すること。

⑦ 駐車施設から、フロント等又は共用の廊下、階段、昇降機などを経由せずに、直接客室に行くことができる出入口がないこと。

⑧ 駐車場は、建物の1階又は屋外に設ける場合は、外部から駐車状況を見通すことができる構造にすること。

⑨ 建物の1階に駐車場又はピロティーを設ける場合は、これらの面積の合計が建築面積の1/3未満であること。

⑩ ロビー等及び食堂等が存する階ごとに男女の区別がある共同用のトイレを設けること。

⑪ 客室の外部に面する窓ガラスが透明ガラスであり、かつ、自然光を遮へいする   フィルム等がはり付けていない構造であること。

⑫ 回転ベッドや大型鏡など、性的好奇心をそそるために設けられた設備を有したり、性的好奇心をそそる物品を備え置く客室を有したりしないこと。

⑬ 性的感情を刺激する内装、照明、装置、装飾品等の内部設備を有しないこと。

⑭ 外観の形態、意匠又は色彩が周囲の環境と調和していること。

⑮ 市長が審査会の意見を聴いた上で、規則で定める構造及び設備の要件を満たすこと。

*1 ロビー等及び食堂等の必要な床面積

客室の収容人員30人以下・・・・・・・・ 30㎡以上

客室の収容人員31人以上50人以下・・・ 40㎡以上

客室の収容人員51人以・・・・・・・・ 50㎡以上

※小樽市ラブホテル建築規制条例概要より

 

■ラブホテルとみなされるか、風営法の対象かどうかのチェックポイント

  1. 個室で異性が専ら休憩するための施設である
  2. 調理室を含む食堂とロビーの床面積は、条例に定められた基準以下である
  3. 施設の外から見える場所に休憩の料金の表示がある
  4. 施設に出入りする者を見えにくくする設備(例 壁・カーテン)がある
  5. 客との対面ができない仕様のフロントである
  6. スタッフと顔を合わせることなく客が個室を利用できる
  7. 客と対面できるフロントで宿泊者名簿の記載・料金やカギの受け渡しをしない施設である
  8. 車庫に屋根あるいは天井があり、カーテンや2つ以上の壁がある
  9. 車庫が客室と繋がっている
  10. 客室に車庫への出入り口がある
  11. 回転ベッドやベッド周囲の鏡など性的好奇心に応ずる設備がある
  12. アダルトグッズが置いてある
  13. ホテルスタッフと顔を合わせることなく料金を支払うことができる

 

まとめ

以上のことから、ラブホテルの新規開業は実質的に難しいと判断せざるを得ない状況です。ラブホテル以外の風俗営業を検討する場合は、ぜひ当事務所までご相談ください。風営法に詳しい警察OBを含むスタッフと経験豊富な行政書士が対応します。