昨今ではコロナ禍により、開催されることが激減したアイドルの「握手会」ですが、接待行為として風営法に抵触しないのでしょうか。ここでは、握手会の性質と風営法を照らし合わせ、その解釈について説明していきます

 

握手会が「社交儀礼」に該当する可能性

握手会は、アイドルがファンと握手をする行為であるため、ファンへの接待に該当するのではないかという声があることは事実です。まずは、風営法における接待の定義について、そのポイントとなるところをみてみましょう。風営法第2条第3項には、接待について以下のように定義しています、

 

「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。

※風営法第2条第3項「用語の意義」より

 

重要なのは、その行為が「歓楽的雰囲気を醸し出しているかどうか」という点にあります。公安委員会の解釈基準によれば、「歓楽的雰囲気を伴う行為」とは、

 

営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して接待とみなされるような会話やサービス等を行うことをいう。

※公安委員会による解釈基準より抜粋

 

としていますので、握手会に当てはめて考えてみると、「アイドルとの会話やサービスなどを通して、癒しを得たり喜び楽しむことを期待したりするファンに対し、その気持ちに応えるための積極的な行為を行うこと」であると推測されます。しかし、一方で解釈基準では、以下のように「接待に該当しない場合」を記しているのです。

 

ただし、社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触等は、接待に当たらない。

※風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の解釈運用基準

 

つまり、握手会が社交儀礼上のあいさつ程度であれば、接待には該当せず風俗営業許可を得る必要もないと考えることができそうです。たとえば、「ありがとう」「よろしくお願いします」「ばいばい」といったような、一般的に挨拶とみなされる表現として握手が行われる場合は、接待に該当しない可能性があります。ただし、実際に判断するのは握手会が行われるエリアの警察になりますので、あくまでも「接待に該当しない可能性が高い」として捉えておくべきでしょう

 

握手会が接待とみなされる場合の注意ポイント

風営法において接待行為が規制されている理由は、接待行為が「反復継続の意思をもって行う営利活動」である場合、「正常な風俗環境」が乱される可能性があるためです。アイドルによる各種活動は営利活動でもありますから、握手会が「営業」と解釈されたとしても不思議はありません

 

握手会などのアイドル活動が風俗営業としてみなされる場合、その条件は、

 

  • 握手会がメインでファンを楽しませる目的がある
  • ファンの下心を刺激する可能性がある

という行為がみられた場合であると考えられるでしょう。

 

具体的には、握手を行うことをメインとして握手券を単独で販売する行為や、社交儀礼としての握手を超えるハグなどのサービスを提供するような場合は、風営法の対象としてみなされるかもしれません。不特定多数のファンに対し、握手という接触行為を行うわけですから、この点については注意が必要になってくるでしょう。

 

このように解釈をひも解いてみると、握手会に関して風営法が適用されるかどうかは曖昧な点も多いといえます。握手券をアイドルCDの付属品として販売する手法も、どこかグレーであるとも考えられます。線引きが曖昧である以上、自力で対応するよりも、風営法に詳しい専門家のサポートを得ながら企画を作り上げていった方が無難かもしれません

 

まとめ

アイドルにとって握手会は、ファンとの距離を縮めることでリピーターを作るための手段であるといえます。握手のときに簡単な言葉を交わすこともありますが、有名アイドルグループの握手会は今のところ摘発の対象にはなっていないようです。だからといって、すべての握手会が風営法の対象外といいきることもできませんので、風営法に詳しい警察OBを含むスタッフと経験豊富な行政書士が対応する当事務所に、ぜひ一度ご相談いただけますと幸いです