たとえば学校や児童福祉施設などの周辺にラブホテルやキャバクラなどの風俗店があったとしたら、それは青少年の健全育成に良い環境だとはいえません。そこで風営法および自治体の条例では、「保全対象施設」を指定し、風俗営業の影響を受けないよう規制しているのです。ここでは、保全対象施設の詳細や北海道の条例について説明していきます。
保全対象施設とは
保全対象施設とは、当該施設が風俗営業から良くない影響を受けないことを目的として、これら風俗営業店から一定以上の規制距離により保護される施設のことを指します。どのような施設が保全対象施設に含まれるかは自治体により異なる点もあるため、開業準備に際しては十分条例を確認しなければなりません。
保全対象施設の例
保全対象施設として指定を受けている施設には、以下のようなものがあります。
学校
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 高等学校
- 中等教育学校
- 特別支援学校(盲学校・ろう学校・養護学校)
- 大学
- 高等専門学校(学校教育法第1条に定められたもの)
※学校教育法第1条に定められた学校のみが対象になるため、専門学校は対象となりません。また、いわゆる1条校に該当する場合はサテライト校や通信制高校も対象になります。
図書館
図書館法第2条に基づき、地方公共団体・日本赤十字社・一般社団法人・一般財団法人により設置されたもの
児童福祉施設
- 助産施設
- 乳児院
- 母子生活支援施設
- 保育所
- 幼保連携型認定こども園
- 児童厚生施設(児童遊園、児童館)
- 児童養護施設
- 障害児入所施設
- 児童発達支援センター
- 情緒障害児短期治療施設
- 児童自立支援施設及び児童家庭支援センター(児童福祉法第7条に定められた12施設に該当するもの)
※保育園は、認可保育園に限り対象となります。
病院・診療所
医療法第1条の5に基づき、以下を対象とします。
第一条の五 この法律において、「病院」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。病院は、傷病者が、科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、かつ、運営されるものでなければならない。
2 この法律において、「診療所」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、患者を入院させるための施設を有しないもの又は十九人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
北海道における保全対象施設の指定
北海道における保全対象施設の指定については、北海道警察が公開している「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」に以下の通り明記されています。
第3条
法第4条第2項第2号の条例で定める地域は、次に掲げる地域(北海道公安委員会が、良好な風俗環境を保全するために支障がないと認めて指定するものを除く。)とする。⑴ 都市計画法(昭和43年法律第100号)第2章の規定により定められた第1種低層住居専用地
域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域又は田園住居地域
⑵ 前号に掲げる地域以外の地域のうち、次に掲げる施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲100メートルの区域内の地域
ア 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校
イ 医療法(昭和23年法律第205号)第1条の5第1項に規定する病院(都市計画法第2章の規定により定められた近隣商業地域又は商業地域に設置されているものを除く。第10条第1項において「病院」という。)
ウ 医療法第1条の5第2項に規定する診療所(患者を入院させるための施設を有しないもの及び都市計画法第2章の規定により定められた近隣商業地域又は商業地域に設置されているものを除く。第10条第1項において「診療所」という。)
エ 図書館法(昭和25年法律第118号)第2条第1項に規定する図書館
オ 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第7条第1項に規定する児童福祉施設
※上記規定は、3カ月以内の有期限営業または移動して営む営業にかかわる営業所で北海道公安委員会が定めるものについては適用外とされます。
まとめ
せっかく営業準備を整えていったとしても、保全対象施設が近隣にある場合は開業することができません。用途地域や営業施設からの距離を満たしていたとしても、保全対象施設が優先されるので、準備段階でよくリサーチしておく必要があります。
当事務所では、風営法に詳しい警察OBを始めとするスタッフおよび経験豊富な行政書士が対応しますので、保全対象施設に関する疑問などについてぜひご相談いただきたいと思います。無事に開業にこぎつけるためには、やはり専門家のサポートは欠かせません。一度お気軽にお問い合わせください。